詩作 『甲斐駒の朝』

  『甲斐駒の朝』

雲がなければ、甲斐駒は
盆地の街並みより、いち早く
朝日を浴びて、薄紅に輝き始める
南アルプスの山々は、いずれも
そんな風なんだろうが、
いつも甲斐駒しか見ていない

父の晩年、
「お父ちゃんが死んだら、甲斐駒の山頂から
 骨を撒いてやるね」
などとうそぶいたことを覚えている

今風に言えば、それは『終活』だったか、
そそくさと墓地を買い、
居間に神棚をつけたりする父だった

父と長兄とで、三男坊の弟に仕送りし、
それに応えて、
叔父は都庁を勤め上げた
順番で、弟が都会へ行くということだったのか

甲府の西のベッドタウンで、
父はわたしを肩車しながら言った
「ほれ、あれが東京だ、見えるか」
のちに思えば、どう考えてもあれは甲府の街
東京は甲府盆地を囲む山々の
さらに向こうだ

スイスに訪れた時、
マッターホルンは、甲斐駒にそっくりだなあ、と感じた
ピラミッド型の稜線が、南アルプス連峰のひとつでありながら、
ただひとり、毅然と立たせている

朝の光に空が白むころ、
いち早く朝日に照らされる甲斐駒は
まだ薄暗い
盆地の底の街並みを見下ろしながら、
今日も一日の始まりを告げている

      2017.1.8. 甲府駅南口 甲斐駒の見える茶店から

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

詩作『わたしの仕事は生きること』

  『わたしの仕事は生きること』

あなたの仕事は?
と問われれば
わたしの仕事は生きること。
がんばって
ちゃんと生きているから、胸を張る。

休むことなく出勤し、
朝の光とご挨拶
今日の仕事も頑張るぞ
息も抜かずにやり抜くぞ
夕陽に見送られるまで

ただ息をして、モノ食べて
それで終わるのは、仕事じゃない
この肉体に精神に
どれだけ酸素が必要か
どれだけ栄養必要か
よく見極めて、咀嚼(そしゃく)して
じっくり吟味して、取り入れる
そのことをちゃんと、思いやる

この世に生きるということは
この世に触れるということで
この世に吹かれるということで
この世に汗するということで
この世を踏みしめるということで
この世に命を投げ入れる、ということ。

生きるはわたしの仕事だから
手を抜くも、リキむも、自分次第
それはわたしの仕事だから
それでわたしは評価される
報酬が決められる
きっとわたしが認知され
きっと蔑(さげす)まれもする

あなたの仕事は?
と問われれば
わたしの仕事は生きること
ちゃんと生きてるつもりだよ
だから、しっかり胸を張る

胸を張るのが私の仕事

 

2016.10.21

| | コメント (2) | トラックバック (0)

「何も分かってなかった」

『何も分かってなかった』

いつの間にか その街でも
あの女の子が胸に我が子を抱いていたりする
その彼女の、幸せに満ちた微笑みを、
見てみれば
やっぱりそうだ
ボクは何も分かってはいなかった
せいぜい深く掘り下げて
考え続けてきたつもりでも
ボクは何も分かっていなかった
ボクは人間というものを
何にも分かってはいなかったんだ

いつだってそうだ
街には人が溢れ
ときに若者たちは、
カップルだったり
カップルではなかったり
その当たり前のさまを見てみても
やっぱり
ボクは何も分かっていなかった
ずっとずっと
考え続けてみたつもりでも、
ボクは何も分かっていなかった
人間について

いったいボクは何を見て来たろう

人というもの
人というもの
と、立ち止まってみては
その所作の理由を
深層心理を
論理を築いては、また積み上げては

でもそれは、モノローグだったか

人というもの
人間というもの
赤子を抱きながら
次の世代
次の世代に寄せるもの
愛に傷つき傷つけて
それでもまた似たような過ちを繰り返しながら
そんな流行り歌を鼻歌しながら

ほんとうにあたりまえの
誰かと誰かの狭間に紡がれる
ほんのり淡く
そして揺るがぬ如くに頑丈な
その狭間を満たすものを
ボクは考えに入れていなかったんだな

「人間とは何だろう」
と大仰(おおぎょう)に構えれば
そのナルシズムが
ボクをますます偏見に貶めた

まず
まず人間とはと問う前に
かの眼差しの注がれる宛や
それをまっすぐ受け止める感性の器
ひとりひとりの身体や心を
施術台に乗せて解剖してもわからない
誰かへ、何かへ必ず向かうそのベクトルを
熱くやわらかな思いを
考えに入れて行こう
せめて あとの日々が
まだ残る間だけでも


 

2016.9.23

| | コメント (2) | トラックバック (0)

  詩作 『初舞台』

「初舞台」

 

ボクの初舞台を

この人生、という舞台を

初にして、一度きり

拍手喝さいもいらないが、

無事平穏もいらない

 

この人生という初舞台を

知ったかするバカバカしさ

高をくくるもったいなさ

いつの朝にも

新しい鋭気と好奇で満ちたまなざしで

新たな一幕に臨むことを強く誓い、

渦巻き、さらわんとするばかりの幾層もの常識に

さらわれても、さらわれても、

軽やかに、さっそうと見送り

 

強固なる内なる城壁の中、

私の学んだ、今この瞬間の常識を

ひとり孤独のうちに、また静かに積み上げる

 

この初舞台が終われば、

何が残るのかは知らず、

誰知るかも知らず、

ただ一度の初舞台、ということを

この胸に銘じて、

 

また、この先へ行くよ

| | コメント (0) | トラックバック (0)

  「『ありゃ、パーじゃん』に、花束を」

  「『ありゃ、パーじゃん』に、花束を」

今年の日傘は、黒い色が主流で
肌の色ではおいそれとは行かないが
傘や服なら、手軽に色を変えたりできる。

デモ行進のプラカード、こんなものが読み取れる
『Stop Shooting us!』
なんと正当な要求だろう!
『我々を撃つのは、止めろ!』

西アフリカの海岸近くに
「パラサイト・イブ」というわれわれ共通の祖先がいた
という知識がなくても、
人類はみな同一種だ、とは第一感だ。
同じ母から生まれたはずの兄弟たちは
片方は奴隷の側、
他方は主人の側。
その視点はどこから生まれた

「人はみな平等じゃん」
と、決まり文句の常識を振りかざし、
酒場の議論に勝てはしても、
人の歴史は曲げられぬ。

「何をわかりきったことを、わめいてやがる」
「借りてきた標語を並べたて」
「ありゃ、パーだ」
「ありゃ、パーだ」
街を大手を振りゆく常識が、声を合わせて。

「ありゃ、パーじゃん」
「ありゃ、パーじゃん」

「ありゃ、パーじゃん」に花束を。

     2016.7.17

 


 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

今朝 二作(詩)

  『希望は、その目に宿る』

希望は、その目に宿る
若々しく、未来を見上げるその目に

繰り返し、繰り返し寄せる岸の波のように
その目を疲弊(ひへい)で覆(おお)ってしまう困難にも、
ボクらは、その闇に、すぐ気づくことができる

だいじょうぶ、
気づきさえすれば。
そこかしこに、光は指しているはずだから。

もう一度、疲弊の膜を拭(ぬぐい)い去って、
希望をその目に宿らせ、
また宿らせ、

見たかい、
今すれ違った輩(やから)が
やっぱり希望を宿していなかったか
まばゆい中空(なかぞら)を見上げるようにして



  『お前も、鮮やかに』

陽ざしが、ますます鮮やかだ

ボクは視線を持っていかれる
そのあたりの景色に、魂も引っ張られて
バスも、ビルも、歩道も、
光いっぱい浴びて、
それぞれを主張している

それがなんとも心地よく、
そこにある、ということが、小気味よく。

まるで運命の友を見つけたかのように、
ボクは視線ごとひかれて、近づいてゆく

そうだ、
「在る」ことは、なんとも、近い。
ボク自身だって、ホントウは、もっともっと近い。

まばゆい日差しがはじける
光の粒たちは、見事に乱舞し、
ボクに見せつけているじゃないか、

「お前も鮮やかに在れ」、と。



  

| | コメント (0) | トラックバック (0)

『かく生きられたなら』


  「かく生きられたなら」

ダンスをするように生きていけたら
   風と戯(たわむ)れ
   陽ざしに影成し
   大地を蹴りつける

ダンスをするように生きていけたら
   信号で揃えて
   もう一度ア・テンポ
   次の瞬間、瞬間へと
   またダイブ、ダイブ、ダイブ!

ダンスするように生きていけたら
   君は世界そのもの
   きみの鼓動と その身振りが
   時と空間そのもの
   命そのもの


歌うように生きていけたら
   笑うように歌い
   むせぶように歌い
   叫ぶように歌う

歌うように生きていけたら
   震える魂は
   大気を震わせ、
   星中を覆う空を震わし、
   それに合わせて星は瞬(またた)く

歌うように生きていけたら
   プロローグから、すでに旅路は始まり
   道のりのヒントと発見にあふれて
   転調、転調、転調!
   その種明かしのような
   驚愕と理由たちが続く

   やがて
   途切れることのなかった一節(ひとふし)が
   生きざまをひとつ、提示する。
   無限の宇宙の広がりに。


夢でもなく
理想でもなく
寓話でもなく

わが人生として生きていけたら

   生まれいずる迷いたち
   それらを正面から見据えて向かえば
   答えがどんどん永遠の方へと遠ざかっても
   立ち向かうことが、立ち向かう勇気を育てる

   迷いこそ指針と気づこう

わが人生として生きていけたら

   この些細な一歩が
   確実に軌跡と残されると覚えながら、
   わたしらしくあらん、
   そのことこそが夢だったと
   最後の一歩まで踏みしめよう。

   そして、もっとも私らしい一瞥(いちべつ)を
   私を見送るものらに送ろう。
   ふと最後に振り返って。

2016-04-30


| | コメント (0) | トラックバック (0)

詩作 『吐息』

   『吐息』

1 生きているなら わたしは息をするよ

  それはわたしの熱をもち
  それはわたしの燃えカスで

  木の実が鳥を誘うように
  落ち葉が森を肥やすように

  わたしも生きていいですか

2 生きているなら わたしは歌を歌うよ

  それはわたしの持つ意思で
  それはわたしの高まりで

  カエルが雨に浮かれるように
  猫が春をにぎわすように

  わたしも生きていいですか

3 生きているなら わたしは夢を描くよ

  それはわたしの過ぎるとき
  それはわたしの造る明日(あす)

  わたしがわたしを造りだす
  わたしのときが生まれくる

  わたしも生きていいですか

        2002.1.31~

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

今年の年賀状に代えて

いやあ、
ものぐさなので、結局、今日になっても、年賀状、出しとらん。

まあ、最近は、出さない人も多いらしいけどね。

でも、こちとら、出すつもりで、賀状はもちろん、文句まで仕上げて、
まだ出してない。
かっこ良すぎ。

もう出さん。ネット上で失礼する。

*******2016年の年賀状をあなたへ******

 

例えば、

この新春の青い空

雲ひとつ見えない、一面の青

それが、キミに見えるか

キミの心にちゃんと映っているか

 

透明人間は、何も見ることができないという

透明な体、透明な眼球や視神経

透明では、光を受け止めるスクリーンにはなれないからだという

さすれば、

透明な心なども、いらないね

私の現実を、より現実的に感じるために

凛と私らしく

色濃く、色濃くあらん

 

日々ちがう空の色

見上げるのは、

日々ちがう私の色

相互いに深まる

鮮やかなる新春の色

それは、

大自然の偉大なるもてなしでありつつ

同時に、

何よりキミという感性が

新たな人生の節目に際して

ますます命を、色濃く染めるから

 

昨日とも、去年とも違う、

輝かしき、その燃焼よ

 

  

******************
本年もよろしくお願いします。


 

| | コメント (1) | トラックバック (0)

『生まれたばかりの』

もしこのオレが、
たった今生まれ落ちたとしたなら、
オレはこんな風だろう

お日様というのは、暖かいんだな
お日様は、とてもまぶしいな
この瞼(まぶた)の間に、容赦なくも優しく、
入り込んでくるなあ

これがこの地球にそそぐ太陽の光だ
オレの生まれたこの星に
このオレを生ませた力だ

とっさに
子供たちが駆け抜ける
朝の歩道
なんと雄弁なその躍動

そしてやっとそのとき気づくんだ
オレは生まれたばかりなんかじゃない
ずっとずっと、ここにいた
あの子らの躍動は
オレの中にもしっかりあって
その記憶が、こんなにも蘇る時がある
その波の高低が
またオレの命を揺さぶったりする
こんな朝


 

2016.1.10

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)