『働きなさい』

    働きなさい

私の仕事を訊かれたら
私の仕事は生きること
一所懸命働いて
キチンと胸を張ってること

思えば幾度か幾晩か
仕事を辞めよか考えた
それでもここまでやってきた
恥じ入るべきは何もない

ただ生きているそのことが
まさしく私の証明だ
ただ生きているそのことで
私は生まれた意味を知る

なぜ生きていると問われれば
それが私の仕事ゆえ
それでいいよと雲のゆく
それでいいよと鳥の鳴く

      2018.5.8

 

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『後悔なさい』

『後悔なさい』

この儚くも一瞬の人生が
何もなしえないまま終わることを
後悔しなさい
潔くザンゲしなさい
今さら格好つけて何になる
結局
うまいこと行かなかったんだ
やりそこなった
それを認めなさい
受け入れなさい

いつしかどこからか
理想の人生というイメージは
わたしの頭中に入り込んでいて
どうあがいても
近づけそうにない優秀美麗の人生は
いったい誰の手中へと去っていったのか
まことの人生
まことの命
そんな風な
ただただ空論の空論を
ツバ飛ばして諭すことが
地上の人間たちの好物だから
その流行に流されて
幕引きまであと少し
よく世間で言われるところ
定番の人生の理想図を前に
さても正直素直に心開きて

悔いなさい
打ちひしがれなさい

それでも黙して
その頭の中にもうひとつ
その手作りの人生像を
語らず去っていくあなたなら

その死に顔の微笑みに
人々、何を思うだろ

  2018.2.26

 

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『すれ違い様』

『すれ違い様』

すれ違い様、
風を起こして、
少年が駆けていった

大きなかばんに、なんだかいろいろ詰め込んで、
背中でガチャガチャ揺らしながら、
少年が駆けてゆく

ボクも少年だった
今はその代わりに、
彼が少年になった
これからまた幾年(いくとせ)か
ときが過ぎ行けば、
また別の誰かが少年になっているだろう
そして
何かいっぱい詰め込んだかばんを
ガチャガチャ鳴らしながら、
目の前を駆けてゆくだろう

少年でいられるのは、
ほんの少しの間だから
そうやってガチャガチャ駆けてゆくことで、
ずっと少年でいられるかのように
そんな風に駆けてゆくんだ

だけれども、
いずれ少年と呼ばれなくなっても、
少年だったものたちの耳には
大きなかばんのガチャガチャという音が
ずっとずっと鳴っていて
そんなことをよく分かっているかのように、
少年は駆けてゆく、
命いっぱい

 

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「ほんとはないもの」

  「ほんとはないもの」

そりゃ、
絆(きずな)なんてものは、
ホントはないのかもしれない
でも、本気で信じているうちに、
人生も過ぎてしまえば、
それは、あったも同じこと

まあ、
愛なんてものも、
ホントはないのかもしれない
でも、
愛を探り、愛を求め、愛を信じ通せば、
それが愛の存在証明だろう

   形ないものを信じるのは、きつい
   でも、形ないものを疑いなく信じられるなら、
   そこにホントの、人生の彩りがある

憎しみなんてものは、
愛と絆でできているのかもしれない
ありもしないウラみと、
ありえないタクらみに、
ボクらは、いつも試されている
そのウラハラのまばゆい輝きを知れ、と

  

    2018.1.9

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詩作 『甲斐駒の朝』

  『甲斐駒の朝』

雲がなければ、甲斐駒は
盆地の街並みより、いち早く
朝日を浴びて、薄紅に輝き始める
南アルプスの山々は、いずれも
そんな風なんだろうが、
いつも甲斐駒しか見ていない

父の晩年、
「お父ちゃんが死んだら、甲斐駒の山頂から
 骨を撒いてやるね」
などとうそぶいたことを覚えている

今風に言えば、それは『終活』だったか、
そそくさと墓地を買い、
居間に神棚をつけたりする父だった

父と長兄とで、三男坊の弟に仕送りし、
それに応えて、
叔父は都庁を勤め上げた
順番で、弟が都会へ行くということだったのか

甲府の西のベッドタウンで、
父はわたしを肩車しながら言った
「ほれ、あれが東京だ、見えるか」
のちに思えば、どう考えてもあれは甲府の街
東京は甲府盆地を囲む山々の
さらに向こうだ

スイスに訪れた時、
マッターホルンは、甲斐駒にそっくりだなあ、と感じた
ピラミッド型の稜線が、南アルプス連峰のひとつでありながら、
ただひとり、毅然と立たせている

朝の光に空が白むころ、
いち早く朝日に照らされる甲斐駒は
まだ薄暗い
盆地の底の街並みを見下ろしながら、
今日も一日の始まりを告げている

      2017.1.8. 甲府駅南口 甲斐駒の見える茶店から

 

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詩作『わたしの仕事は生きること』

  『わたしの仕事は生きること』

あなたの仕事は?
と問われれば
わたしの仕事は生きること。
がんばって
ちゃんと生きているから、胸を張る。

休むことなく出勤し、
朝の光とご挨拶
今日の仕事も頑張るぞ
息も抜かずにやり抜くぞ
夕陽に見送られるまで

ただ息をして、モノ食べて
それで終わるのは、仕事じゃない
この肉体に精神に
どれだけ酸素が必要か
どれだけ栄養必要か
よく見極めて、咀嚼(そしゃく)して
じっくり吟味して、取り入れる
そのことをちゃんと、思いやる

この世に生きるということは
この世に触れるということで
この世に吹かれるということで
この世に汗するということで
この世を踏みしめるということで
この世に命を投げ入れる、ということ。

生きるはわたしの仕事だから
手を抜くも、リキむも、自分次第
それはわたしの仕事だから
それでわたしは評価される
報酬が決められる
きっとわたしが認知され
きっと蔑(さげす)まれもする

あなたの仕事は?
と問われれば
わたしの仕事は生きること
ちゃんと生きてるつもりだよ
だから、しっかり胸を張る

胸を張るのが私の仕事

 

2016.10.21

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「何も分かってなかった」

『何も分かってなかった』

いつの間にか その街でも
あの女の子が胸に我が子を抱いていたりする
その彼女の、幸せに満ちた微笑みを、
見てみれば
やっぱりそうだ
ボクは何も分かってはいなかった
せいぜい深く掘り下げて
考え続けてきたつもりでも
ボクは何も分かっていなかった
ボクは人間というものを
何にも分かってはいなかったんだ

いつだってそうだ
街には人が溢れ
ときに若者たちは、
カップルだったり
カップルではなかったり
その当たり前のさまを見てみても
やっぱり
ボクは何も分かっていなかった
ずっとずっと
考え続けてみたつもりでも、
ボクは何も分かっていなかった
人間について

いったいボクは何を見て来たろう

人というもの
人というもの
と、立ち止まってみては
その所作の理由を
深層心理を
論理を築いては、また積み上げては

でもそれは、モノローグだったか

人というもの
人間というもの
赤子を抱きながら
次の世代
次の世代に寄せるもの
愛に傷つき傷つけて
それでもまた似たような過ちを繰り返しながら
そんな流行り歌を鼻歌しながら

ほんとうにあたりまえの
誰かと誰かの狭間に紡がれる
ほんのり淡く
そして揺るがぬ如くに頑丈な
その狭間を満たすものを
ボクは考えに入れていなかったんだな

「人間とは何だろう」
と大仰(おおぎょう)に構えれば
そのナルシズムが
ボクをますます偏見に貶めた

まず
まず人間とはと問う前に
かの眼差しの注がれる宛や
それをまっすぐ受け止める感性の器
ひとりひとりの身体や心を
施術台に乗せて解剖してもわからない
誰かへ、何かへ必ず向かうそのベクトルを
熱くやわらかな思いを
考えに入れて行こう
せめて あとの日々が
まだ残る間だけでも


 

2016.9.23

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  詩作 『初舞台』

「初舞台」

 

ボクの初舞台を

この人生、という舞台を

初にして、一度きり

拍手喝さいもいらないが、

無事平穏もいらない

 

この人生という初舞台を

知ったかするバカバカしさ

高をくくるもったいなさ

いつの朝にも

新しい鋭気と好奇で満ちたまなざしで

新たな一幕に臨むことを強く誓い、

渦巻き、さらわんとするばかりの幾層もの常識に

さらわれても、さらわれても、

軽やかに、さっそうと見送り

 

強固なる内なる城壁の中、

私の学んだ、今この瞬間の常識を

ひとり孤独のうちに、また静かに積み上げる

 

この初舞台が終われば、

何が残るのかは知らず、

誰知るかも知らず、

ただ一度の初舞台、ということを

この胸に銘じて、

 

また、この先へ行くよ

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  「『ありゃ、パーじゃん』に、花束を」

  「『ありゃ、パーじゃん』に、花束を」

今年の日傘は、黒い色が主流で
肌の色ではおいそれとは行かないが
傘や服なら、手軽に色を変えたりできる。

デモ行進のプラカード、こんなものが読み取れる
『Stop Shooting us!』
なんと正当な要求だろう!
『我々を撃つのは、止めろ!』

西アフリカの海岸近くに
「パラサイト・イブ」というわれわれ共通の祖先がいた
という知識がなくても、
人類はみな同一種だ、とは第一感だ。
同じ母から生まれたはずの兄弟たちは
片方は奴隷の側、
他方は主人の側。
その視点はどこから生まれた

「人はみな平等じゃん」
と、決まり文句の常識を振りかざし、
酒場の議論に勝てはしても、
人の歴史は曲げられぬ。

「何をわかりきったことを、わめいてやがる」
「借りてきた標語を並べたて」
「ありゃ、パーだ」
「ありゃ、パーだ」
街を大手を振りゆく常識が、声を合わせて。

「ありゃ、パーじゃん」
「ありゃ、パーじゃん」

「ありゃ、パーじゃん」に花束を。

     2016.7.17

 


 

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今朝 二作(詩)

  『希望は、その目に宿る』

希望は、その目に宿る
若々しく、未来を見上げるその目に

繰り返し、繰り返し寄せる岸の波のように
その目を疲弊(ひへい)で覆(おお)ってしまう困難にも、
ボクらは、その闇に、すぐ気づくことができる

だいじょうぶ、
気づきさえすれば。
そこかしこに、光は指しているはずだから。

もう一度、疲弊の膜を拭(ぬぐい)い去って、
希望をその目に宿らせ、
また宿らせ、

見たかい、
今すれ違った輩(やから)が
やっぱり希望を宿していなかったか
まばゆい中空(なかぞら)を見上げるようにして



  『お前も、鮮やかに』

陽ざしが、ますます鮮やかだ

ボクは視線を持っていかれる
そのあたりの景色に、魂も引っ張られて
バスも、ビルも、歩道も、
光いっぱい浴びて、
それぞれを主張している

それがなんとも心地よく、
そこにある、ということが、小気味よく。

まるで運命の友を見つけたかのように、
ボクは視線ごとひかれて、近づいてゆく

そうだ、
「在る」ことは、なんとも、近い。
ボク自身だって、ホントウは、もっともっと近い。

まばゆい日差しがはじける
光の粒たちは、見事に乱舞し、
ボクに見せつけているじゃないか、

「お前も鮮やかに在れ」、と。



  

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